片足カバリア島

狐かわいいよ狐、な狐の、MMORPG「トリックスター」お子様には不向きなプレイ日記。文字サイズは「小」がいいみたい。

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オンボ 

ウブス港をのぞんだ小高い山の手には歓迎学園というのが建っている。
これが周囲をぐるりと深い深い森に囲まれていて、学園というだけにここで不良の幽霊に襲われただの、カツアゲされただの「ならでは」ないわくがつきまとっているのだが、実は学校自体も妖怪の巣窟である。お札をべたべた貼られた古い校舎には物の怪が跋扈し、今では冒険者以外に出入りはない。
学校だから音楽室もある。美術室もある。教室も残っているし科学室もある。全て怪物達の住むところである。
そんな歓迎学園の奥の奥に、生き物の屑がいた。

「……それでね、いきなりあたしを柵の向こうに突き飛ばしたの。屋上よ?信じられる?そりゃ幽霊でもない限り死ぬわよ。で、死んじゃったの、あたし。今度あの女に会ったら、顔に硫酸ぶっかけてやるんだぁ。ちょっと顔が可愛いからってチヤホヤされて、今頃どうしてるのかしら。絶対殺してやるんだぁ。髪が自慢な奴だったから、ローソクで焼いてチリチリにしてやるんだぁ。ウケケケケケケ」
ゴーストのミコはウケケケケケケ!と笑い声を立てた。
ゴギー、ガッシャン。
ゴギー、ガッシャン。
『オンボ』は黙々と、仲間のなきがらを集めて溶鉱炉へと運ぶ作業を続けていた。
「ちょっと、オンボ聞いてるの?」
ゴギー。
オンボが振り返ると、金属でできた体の継ぎ目から、緑色の汁がちょっと出た。
さびた大きなボディには古い電球の目が一つ付いていて、足の部分のダクトからはしじゅう排気ガスが吹き出す。誰が呼んだか生き物の屑、『バイオジャンク』という怪物のたぐいである。
「オンボったら!聞きなさいよ」
ゴギー、ガッシャン。
『オンボ』はミコがつけた名前である。オンボロのオンボ。隠亡のオンボ。冒険者がたわむれになぎ倒していく仲間の体を、ブルドーザーのような両手でかき集め、廃棄する。大昔に作られた工業システムが、溶鉱炉に投げ捨てられたバイオジャンクの死体を再構築し、また新たな生き物の屑が生産され、ここ機械室に放たれる。それがオンボの仕事である。
何年、何十年も続いていた。ミコを殺したとかいう同級生だかなんだかもとっくに死んでいるのだが、ゴーストには過去も未来もないから、ミコはそれを知らない。ミコはあまり顔の美しくない少女の亡霊で、たぶん、地味すぎていじめられていたんだろうなあ、と、オンボは思っている。
「こんな事もあったわ。あたしを朝から音楽準備室に呼び出しておいて、閉じこめるの。兵糧攻めよ。信じられる?放課後まで開けてもらえなくて、あたし水も飲めなくて、お腹が空いて死にそうだったぁ。まあ死んでるんだけど」
吹奏楽部の奴ら、今頃どうしてるのかしら?今度会ったらモーツアルトの石膏像で頭かち割ってやるわウケケケケケケ! 
ミコのその話も、何十年も前から繰り返されていたものだ。だが、ゴーストは体がないものだから脳も怪しい。音楽室の話は何百回目であろうか。
ゴギー、ガッシャン。
オンボは黙って冷たい床の上を歩き続けた。ミコのほうも、オンボ以外に聞いてくれる者がいないので腹も立てない。立てる腹もない。「まあ死んでるからね」木製の作業机にだるそうに腰掛けて、ワンピースの裾から棒ッ切れのような足をぶらぶらさせている。「だるいっても、体ないんだけど」
ミコはオンボの仕事を見ている。オンボは生き物の屑のさらに屑になった(えてしてそれは銃士の一撃によってバラバラになった)ものを、機械的に、まあ機械なのだが、集めて、運び、運んでは集める。ミコはそれを見ている。うす暗い機械室の廃棄場で、それは何十年も続いている光景であった。
ただ、その日は違った。
「ねえオンボ、夢ってある?」
夢?
ゴギー。
オンボの手が止まったのでミコは得意になった。
「夢。オンボの夢。あたしの夢はねえ、ウケケケケケケ!あたしをいじめた奴らを、そこの鉄板の一振りでトマトみたいに潰してやるの。信じられないでしょ?ねえ、オンボの夢は?」
ガッシャン。
山になった仲間の死体が段々減ってゆく。冒険者たちが来る朝まではまだ時間がある。ミコの指さした部屋の一角には、ミコの背丈の倍はありそうな厚い鉄板が立てかけられていた。持つのは無理じゃないかなぁ、とオンボは思っている。
「ねえオンボ、こんな狭い機械室の廃棄場でさ、毎日毎日同じ事してさ、嫌にならないの?あたしだったら、信じられない」
その問いは、頭の怪しいミコとおんぼろのオンボのことだから、前にもされたかもしれなかった。
でもその日は違った。
「……ソ、ト」
ゴギー。オンボが喋ると排気ガスが濃くなった。
「……ソ、トガ、見、タ、イ……」
オンボはミコが座っている、すり減った木の作業台を見た。チカチカと電球がまたたいた。
「ソノ、ツクエ、モ、モトハ、ベツノモノカラ、ツクラレタ、ラシイ。コノ、タテモノノ、マワリニ、イッパイ、ザイリョウガ、ハ、ハエテイル、ラシイ。
ミドリイロ。ソノ、マワリニハ、タクサン、ツチガ、アッテ、ミズガ、アッテ、ヒトモイル。ナ、ナカマヲ、ウッタリシナイ、ヤサシイ、ヒト、イルカモシレナイ。
オ、オンボ、ノ、ナカマ、ドロドロニ、ナッテ、マタ、デキル。デキテクル。オンボモ、ソウダッタ。
ソノマエハ、モット、ベツノモノ、ダッタカモシレナイ。オンボ、ドウヤッテ、ウマレテキタ、ノカ。シリタイ」
「『ナ、ニ、シ、テ、ル、ノ』以来ね、オンボが喋ったの。あたしがここでうろついてた時以来。それも、そんなに沢山のことばを知ってたの?信じられない」
ミコは小さな目をまん丸くした。
「……でもね、外かぁ。外ね。無理よ。だって、ほら」
次にミコが指さしたのは、機械室の高い天井に取り付けられている、小さな小さな丸窓だった。青い空が見え朝の光がかすかに射している。しかし、窓の周りにはありがたいお札が幾重にも貼られ、異形のものの脱出を阻んでいたのだった。
「あたし、背ー届かないからさ。信じられない。ってそーゆー問題じゃないっか!ウケケ」
「……ソレ、ニ、オンボ、コノ、ヘヤ、デラレナ、イ」
いまや完全に作業の手を止めたオンボは、悲しげな顔(?)で、機械室の出口へと続く階段を指さす。
ゴギー。
「オンボ、カイダンノ、ノボル、アシ、ナ、ナイ」
チカ、チカ、オンボの電球の目が点滅する。
「あ、そっか、オンボの足、ダクトだもんね……段差には対応してないよね。信じられない。これがほんとの、手も足も出ないってヤツ?」
ウケケケケっ、と、わざとミコはお茶目に肩をすくめる。無理な問題だから、と、二人の事なので、前にも行われた問答かもしれなかった。
でも、その日は違った。
「……そうだ! オンボ、あたしが乗り移ってあげる」
「ヘ?」
「あたしのゴースト・パワー(何それ?とミコ自身もちょっと考えた)で、オンボの体を階段の上まで持ち上げる事くらい、できるはずよ。信じるものは救われる!信じられる?」
ミコが成仏できないのは、何も信じていないからなのかなぁ、と、オンボは思う。

機械の体の中に、ぬるり、と何かが入ってきた。
「……いくわよ」
オンボが喋った。いや、オンボのボディに憑依した、ミコが喋った。
「覚悟はいい?外には出られなくても、機械室の外には自動ドアがあるから。ガラス越しに庭が見られるわ。念願の外よ。信じられる?このあたしを。ウケケケケケケ!」
「ウン」
「……う・お・りゃ、あ・あ・あああああぁあああ?!!」
ガゴン。ガゴン。
ふわり、何十年も生きてきたオンボを初めての感覚が襲った。本当にその日は違った。違ったのだ。
「オンボ!わかる?浮いてるわよ!行けるわ」
「ウン。ソ、ト」
「まっかせなさい……」
その日は違った。銃士が一人、階段の上から突然姿を現したかと思うと、オンボごとミコを撃ち砕いた。オンボたちは溶鉱炉の中へ一瞬で消えた。

いじめられ抜いた挙げ句に殺されたミコの怨念は、何度かの死を体験しても消える事はない。
暗い所を好んでさまよう彼女だったが、その日は違った。違ったのだ。
胸にたったひとつ熔け残った電球をいだいて、自動ドアの内側に立つ。
朝の光はことに眩しくガラス越しに差し込み、生き物の屑の屑、オンボの目だったものは、ミコがその手をそっと掲げると、キラキラとまたたいた。


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久しぶりに 字をいっぱい書きました

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[ 2008/09/06 18:26 ] 未分類 | TB(0) | CM(11)
(;ω;)ブワッ
[ 2008/09/07 06:46 ] [ 編集 ]
真鍮集め…これを読む前に終わらせておいてよかった…!
[ 2008/09/07 12:26 ] [ 編集 ]
公式設定でいいと思います。
[ 2008/09/07 12:45 ] [ 編集 ]
全俺が泣いた。
[ 2008/09/07 22:09 ] [ 編集 ]
今までROMばっかりでしたが
久々に感動したのでつい書き込んでしまいました・・・
;w;
[ 2008/09/08 04:20 ] [ 編集 ]
しばらく機械室はそっとしておこう・・・。
[ 2008/09/08 09:00 ] [ 編集 ]
このコメントは管理人のみ閲覧できます
[ 2008/09/08 23:27 ] [ 編集 ]
(´;ω;`)ウッ・・・
機械室行くたびに思いだしちゃいそうです・・・;;
[ 2008/09/09 16:26 ] [ 編集 ]
>うさみんご
目玉ペッカー!

>しまさん
サブのレベル上げでガッチャンガッチャンぶっ殺してる時に思いついた話でした。はは。

>ケイダさん
公式の名前が「バイオジャンク」ですよ!
何か書いてくれって言ってる気がしたので……

>エリアス・ビークさん
ちょっといい話を書いて「よし、まだ自分こういう話書けるな!」と確認したかったんです(汚い大人)

>カトラシアさん
はじめまして。堪能していただけたようで嬉しいです。
うちのブログは何故かほとんど知り合いしかコメントをくれないという過疎った状態なので、とても貴重なコメントに感謝感激です。

>(・ω・)))))) さん
私も何となく足が遠くなったというか……あの裏でオンボが働いているかと思うと……。

>非公開コメント裏○々さん(ふせてない)
読んでないだろ!読んでないだろ!

>ディオ☆さん
思い出してあげて下さい……優しい人の存在を最後まで信じていた、人間の屑のことを。




皆さん、コメントありがとうございました。
本気で書いたのでめっちゃ嬉しかったです。こういうのはまた書くかもしれません。お目汚しになりますが(いつもの記事はそうでないとでも……)どうか、お付き合い下さい。

[ 2008/09/10 20:41 ] [ 編集 ]
初コメ失礼します!

ブログランキング連打したくなるくらい、めちゃめちゃ感動しました;;
特にオンボが机を見て外の世界について語るトコがもぅ…
これから真鍮はバザー買いしようと思います…

次回作、楽しみにしてますね!
[ 2008/09/20 12:58 ] [ 編集 ]
初めまして。
お楽しみ頂けたようで光栄です。
オンボの台詞は、最後に足して、「よしこれで完成だ」とおもった部分だったりします。誰かイラストとか描いてくれないでしょうか……。

次回作、あるかどうかわかりません!

[ 2008/09/22 21:58 ] [ 編集 ]
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